「歯根膜細胞シートを用いた歯周組織再生治療と歯根膜つきインプラントの可能性について」
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任顧問 石川 烈 先生
私どもは歯根膜細胞シートを用いた歯周組織再生療法の臨床的確立を目指して、智歯などの根面より得た細胞群を温度応答性培養皿で培養することで「歯根膜セメント質複合性」のシートを作ることができた。これらの歯根膜細胞シートを歯周欠損に適用し、歯周組織が再生することを確認している。今回はさらにインプラント体に歯根膜をつける努力をしているがその進行状況も合わせてお見せしたい。また最初に歯周病が全身疾患と深い関わりを持っている事実にも触れたい。
石川 烈 昭和15年(1940)12月6日生
日本歯周病学会元理事長、日本レーザー歯学会元理事長、日本口腔インプラント学会元副会長、日本歯科保存学会・口腔病学会・日本歯周病学会・日本レーザー医学会・日本レーザー歯学会、名誉会員
「インプラントとビスフォスフォネートの関係」
(一社)東京形成歯科研究会 施設長・理事長 / 国際血液・幹細胞臨床応用会議(ISBB)チェアマン 奥寺 元
私ども関係が深い Prof R MARX とのかかわりから PRP 関係 高圧酸素療法骨代謝マカーなどを指導を受けてきた。彼の臨床の経過の中ですなわち全身状態が悪い患者のインプラントや顎骨関係で Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaws(BRONJ)関係が多発することを突き止めて Osteonecrosis 骨壊死の事の関係を発表した。
しかし特殊な環境にあることを鑑見ず世界的に情報が蔓延してすべての諸悪の根源がBisphosphonate にあると世界中の口腔外科医が異語同音に唱えている。
昔から Osteonecrosis は存在しており、また高頻度に服用されている Bisphosphonate においてのエビデンスとして因果関係を100%実証することはない。この事は友人である MARX も訂正を加えている。
この事を踏まえて以前私どもが、研究したデターが学会としてもレビユーとして使用された。
再度 BP 服用がインプラントにどのような影響をおよぼすか及び骨質規定因子とどのような関係があるかを調べた内容及びインプラント使用患者で BP 服用者の骨質規定因子を測定したデータを再評価検討を行ったのがあるので、この事を今回この機会で話したいと思う。
「BRONJ と Implant について」
明海大学病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学分野Ⅰ 助教 田草川 徹 先生
インプラント治療を行う上で、骨のバイオロジーを理解することは非常に重要であると考えられる。骨再生の一手段として馴染みの深い PRP に関する当科での考えと、最近トピックスとして議論されている Bisphosphonate 関連顎骨壊死(BRONJ)に関してインプラント治療に特化した形で基礎的内容ならびに臨床的内容からそれぞれの特徴やインプラント治療を行う上でどういった事に注意が必要なのかを検討する
田草川 徹
自家抜去歯を骨造成に応用した症例 ―新しく開発したミニバレル手用歯牙粉砕器―
主演者 テルミナ歯科クリニック/(一社)東京形成歯科研究会 鳥村 亜矢 先生
Ⅰ目的: 骨造成における有効な骨補填材としては,自家骨がゴールドスタンダートとして位置づけられている。 自家骨ゆえにその生体反応が少なく,感染も少ない。また各種 Growth Factor 特に BMP-2などの骨誘導蛋白が存在している。われわれは自己の天然歯牙を用いた歯牙紛体を利用して,臨床上また組織学的に安定した結果を報告している。 今回,智歯などの大きく硬いエナメル質を粉砕する硬質鋼の粉砕器により,熱処理と脱灰を高額で複雑な器械を使わずに,容易に顆粒粉砕することが可能となったので報告する。
Ⅱ 材料及び方法: 説明と同意を得た患者を対象とした。本研究は東京形成倫理委員会(承認番号007)の承認を受けた。保存不可能な天然歯牙を有機質と不純物をカーバイトバーで除去し,90%アルコールで洗浄消毒後,ハンマーを用いた粉砕用器で歯牙を小片化し,さらに手用の新しく開発した器具である新型ミニバレル硬質鋼により 600~800 メッシュの顆粒に粉砕した。さらに血液臨床再生応用 PRP 及び PRF 製剤と混入し治癒促進と骨再生を求めた。
Ⅲ結果: ミニバレルの従来型は硬質鋼の切削孔は2㎜と大きく,これではエナメル質は生体において吸収されにくく排出される。開発した切削孔は1mm であり,顆粒として容易に粉砕できる。組織検査においては,PRF を併用した歯肉組織は正常であった。骨組織においては,炎症細胞は多少散見されるものの,外部から板状骨が観察され内部は脂肪及び線維が多かった。他の症例では炎症細胞は比較的少なく,新生骨も伺えた。また,残存した歯牙顆粒は吸収が認められた。
Ⅳ考察および結果: 高温熱処理および有機物処理しない,自己歯牙は炎症症状が起きず,組織検査においても炎症細胞が少数で生体に同化された。さらに新生骨に置換していた。すなわち採取骨と同じ骨再生の効果があると思われた。しかも新生骨は硬い傾向であった。これらの事より保存できない大きく硬いエナメル質を含む歯牙は容易に粉砕でき,吸収されて新生骨に変化していた。今後貴重な医療資源として骨造成に利用できることが示唆された。